メールマガジン
2012.02.28
656号 公と私の関係について
私は、地方自治に関する講演等を行なうときは、努めて「公」と「私」の関係を採り上げて来ましたが、超高齢化社会における新たなルールづくりの観点から昨今、改めて「公」と「私」が論議されていることを興味深く思っています。
かつては、高齢者のお世話や子育ては家庭の受け持ちであり、地域の清掃や防災、防犯はコミュニティの担当でした。しかし、今やそれは「公」の仕事となり、誰もそれを当然としていますけれども、今後、拡大する「公」を、すべて「官」が担うことには疑問が出ています。税金を使い公務員が携わるとすれば、際限なく「官」が肥大し、「民」は負担に耐えられなくなるからです。
「官」はできるだけ縮小し、大きくなる「公」を地域社会の「民」全員で、公平に公正に負担し合う「小さな官、大きな公」がこれからのあるべき姿なのです。
戦前は、国や地域社会という「公」のために「私」を犠牲にしろという「滅私奉公」が流行でした。戦後はその反動で、「私」がどんどん強くなり、国や地域社会のつながりが希薄となって、「私」さえ良ければという「滅公奉私」に変わりました。「公」は、「私」が文句をいうところ、金をぶんどるところとなりました。
しかし、よく考えてみれば「公」と「私」は、全体と部分の関係です。「公」とは「私」が全部集った集合体、「私」は「公」のそれぞれ構成要素で、「公」と「私」はイコールであって、個々の「私」が良くならなければ全体の「公」が良くなる筈はなく、逆に「公」が良くなってこそ「私」も潤う筈です。
私は、「滅私奉公」でも「滅公奉私」でもない「奉私奉公」こそ正しく、相互扶助の精神に溢れた、自立した「民」の共同体こそ、新しい地方自治と確信しています。
2016.07.09
2016.06.29
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